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前橋地方裁判所 平成10年(行ウ)3号 判決 2000年7月05日

原告

原告

原告

右三名訴訟代理人弁護士

後藤孝典

被告

高崎税務署長 小林政昭

右指定代理人

戸谷博子

須藤哲右

山畑昌子

瀧野嘉昭

永塚光一

中山哲一

川田一夫

田口勉

主文

一  原告らの請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由

第一請求

一  被告が、原告甲の相続税につき、平成七年一月三一日にした相続税更正処分のうち課税価格六〇一五万四〇〇〇円、課税六七五万五三〇〇円を超える部分並びに同日付け過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。

二  被告が、原告乙の相続税につき、平成七年一月三一日にした相続税更正処分のうち課税価格四四二一万一〇〇〇円、課税四九四万三〇〇〇円を超える部分並びに同日付け過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。

三  被告が、原告丙の相続税につき、平成七年一月三一日にした相続税更正処分のうち課税価格三八〇四万六〇〇〇円、税額四一四万五一〇〇円を超える部分並びに同日付け過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。

第二事案の概要

本件は、丁が平成四年一〇月二〇日に死亡したことに伴い、その相続人である原告らがした相続税の申告に対し、被告が、平成七年一月三一日付けで各相続税更正処分(以下「本件各更正処分」という。)及び各過少申告加算税賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」といい、本件各更正処分と一括して「本件各処分」ということがある。)をしたことについて、原告らが、本件各更正処分は、丁の有する有限会社Aに対する出資口を相続財産として評価するに当たり、相続財産の評価方法等を定めた財産評価基本通達に法人税等相当額を控除してすると定められているのに、これを控除せずに評価したこと、及び相続した不動産のうち、土地区画整理事業施行区域内にあって仮換地の指定もなされていない土地の時価について、過大に評価したことから、前記第一の一ないし三の各課税価格、税額を超える部分に違法があり、このような違法な更正処分を前提としてされた本件各賦課決定処分も違法であるとして、本件各更正処分のうち右部分及び本件各賦課決定処分の取消しを求めた事案である。

一  争いのない事実

1  丁は、平成四年一〇月二〇日に死亡して同人につき相続が発生した(以下「本件相続」という。)。丁の相続人は、原告ら及び戊であるが、原告らは、平成五年四月二〇日、被相続人丁に係る相続税の申告書を提出した。そこには、原告らの納付すべき相続税額は〇円と記載されていた。

2  被告は、関東信越国税局の職員の調査に基づいて、別紙一の一ないし三のとおり、平成七年一月三一日、原告甲に対し、課税価格を二億九八九〇万四〇〇〇円、相続税額を一億〇七七五万一三〇〇円、過少申告加算税の額を一五一一万八五〇〇円とし、原告乙に対し、課税価格を二億四三一六万九〇〇〇円、相続税額を八七五五万九五〇〇円、過少申告加算税の額を一二三九万一五〇〇円とし、原告丙に対し、課税価格を二億二一〇八万七〇〇〇円、相続税額を七九五一万八三〇〇円、過少申告加算税の額を一一三〇万五五〇〇円とする本件各更正処分及び本件各賦課決定処分を行なった。

なお、原告らは、被告に対し、関東信越国税局の職員の調査中の平成六年一二月一九日、別紙一の一ないし三の区分修正申告記載のとおり、本件相続の修正申告書を提出した(以下「本件修正申告」という。)。

原告らは、右各処分を不服として、平成七年二月一六日、関東信越国税局長に対して意義申立をなしたところ、同局長は、平成七年六月一日、右異議申立をいずれも棄却するとの異議決定をなした。原告らは、右異議決定を不服として、平成七年六月二八日、国税不服審判所長に対して審査請求したところ、同国税不服審判所長は、平成九年一一月一三日付けで審査請求を棄却する旨の裁決をし、裁決書を平成九年一二月一〇日付の「裁決書謄本の送達について」と題する書面とともに原告らに送達した。

以上の経緯は、別表一の一ないし三記載のとおりである。

3  Aの設立に至る経緯等

(一) 丁は、平成二年八月三一日、同人所有の高崎市東町の土地を担保にさくら銀行から一七億六〇〇〇万円の借り入れを行なった。

(二) 丁及び本件相続人は、平成二年九月一日、右(一)の借入金のうち一七億円を出資して、代表取締役を原告丙、事業目的を有価証券の保有・運用・投資及びこれに附帯する一切の業務とする有限会社Bを設立した。

B設立に際しての同社の資本金額は一七〇〇万円、資本準備金組入額は一六億八三〇〇万円、出資口数一万七〇〇〇口、出資一口一〇〇〇円であり、出資一口の引受金額を一〇万円として、丁が一万六九六〇口、本件相続人らがそれぞれ一〇口ずつ出資を引き受けた。なお、本件相続人らの払込金額合計四〇〇万円は、丁が前記(一)の借入金を原資に本件相続人らにそれぞれ一〇〇万円ずつ贈与したものである。

(三) 丁及び原告らは、平成二年九月三日、代表取締役を原告丙、事業目的を不動産賃貸業及びこれに附帯する一切の業務、資本の総額を一六九九万円、出資口数一万六九九〇口、出資一口一〇〇〇円とするAを設立した。

A設立に際しては、丁は、Bの出資一万六九六〇口を現物出資して、Aの出資一万六九九〇口(出資額一六九六万円、以下「本件出資」ということがある。)を取得し、原告らは、Bの出資を一〇口ずつ現物出資して、Aの出資を一〇口(出資額一万円)ずつ取得した。

(四) 平成四年一〇月二〇日、丁の死亡により本件相続が開始した。

本件出資一万六九六〇口及びさくら銀行からの借入金債務(本件相続開始時における残元金は一七億六〇〇〇万円)については、遺産分割協議により、本件相続人らが相続することになった。

(五) 本件相続人らは、平成五年四月二〇日、被告に本件当初申告書を提出したが、同申告書によると、本件相続人らが本件相続により取得した財産の価額二〇億三六一一万六九三三円から本件相続に係る債務及び葬式費用の金額一九億五六六六万八一六二円を控除した課税価格七九四四万八〇〇〇円は、法定相続人四名の遺産に係る基礎控除額八六〇〇万円を下回るため、算出税額は(相続税額)は、〇円であった。

右の本件相続により取得した財産のうち、本件出資の評価額は、財産評価基本通達(昭和三九年四月二五日付け直資五六(例規)、直審(資)一七(平成六年六月二七日付け課評二―八ほかによる改正前のもの)、以下「評価基本通達」という。右平成六年改正後のものと特に区別するときは、「平成二年通達」といい、右改正後のものは「平成六年通達」という。)を適用して、一口当たりの純資産価額の計算上「評価差額に対する法人税額等相当額」を控除して算定されたものである。

二  争点及びこれに対する当事者の主張

1  被告の課税根拠

(被告の主張)

被告が主張する丁に係る原告ら及び戊の相続税の課税価格及び納付すべき相続税額等は、別表二「課税価格等の計算明細表」及び別表三「税額算出表」に記載したとおりであり、その内訳等は次のとおりである。

(一) 課税価格の合計額(別表二の符号12の「合計額」欄の金額)

一〇億〇六五四万九〇〇〇円

右金額は、次の(1)記載の金額から、次の(2)記載の金額を控除した後の金額に次の(3)記載の金額を加算した後の金額(ただし、国税通則法一一八条一項の規定により、本件相続人ら一名ごとに課税価格の一〇〇〇円未満の端数を切り捨てた後のもの)である。

(1) 相続により取得した財産の総額(別表二の符号6の「合計額」欄の金額)

二九億五六二九万五八七三円

右金額は、本件相続人らが本件相続により取得した財産の総額であり、その内訳は次のとおりである。

<1> 土地の価額(別表二の符号1の「合計額」欄の金額)

一〇億三四七五万〇八六八円

右金額の内訳は、別表四「土地の価額の明細表」に記載したとおりであり、本件修正申告書に記載された金額と同額である。

因みに、別表四の符号12に記載の高崎市東町の価額は五億三〇一八万〇〇六一円である。

<2> 家屋の価額(別表二の符号2の「合計額」欄の金額)

八八万六一八五円

右金額の内訳は、本件修正申告額と同額である。

<3> 有価証券の価額(別表二の符号3の「合計額」欄の金額)

一七億五六六七万〇七七〇円

右金額の内訳は、別表七「有価証券の価額の明細表」記載のとおりであり、このうち同表の符号4以外の各有価証券の価額は、本件修正申告額と同額である。

因みに、別表二の符号3記載の本件出資の金額ないし別表七の符号4記載のA(本件出資)の金額は、一五億七三一四万一七六〇円である。

<4> 現金・預金の額(別表二の符号4の「合計額」欄の金額)

九四六一万二三八七円

右金額の内訳は、別表五「現金、預貯金等の明細表」のとおりであり、本件修正申告額と同額である。

<5> その他の財産の価額(別表二の符号5の「合計額」欄の金額)

六九三七万五六六三円

右金額の内訳は、別表六「その他の財産の価額の明細表」のとおりであり、本件修正申告額と同額である。

(2) 控除すべき債務の金額(別表二の符号9の「合計額」欄の金額)

一九億五六六六万八一六二円

右金額は、相続税法一三条及び一四条により、本件相続人らが本件相続により取得した財産の価額の合計額から控除すべき債務の合計額であり、その内訳は次のとおりである。

<1> 借入金の金額(別表二の符号7の「合計額」欄の金額)

一九億四七八〇万六八五二円

右金額は、丁のさくら銀行高崎支店及びBからの借入金の金額であり、本件修正申告額と同額である。

<2> 未払金の金額(別表二の符号8の「合計額」欄の金額)

八八六万一三一〇円

右金額は、丁のBに対する未払金の金額であり、本件修正申告額と同額である。

(3) 純資産価額に加算される贈与財産価額(別表二の符号11の「合計額」欄の金額)

六九二万二〇〇〇円

右金額は、本件相続人らが本件相続の開始前三年以内に丁から贈与により取得した財産について、相続税法一九条により、本件相続人らの相続税の課税価格に加算されるべきこととなる贈与財産の価額であり、本件修正申告書と同額である。

(二) 本件相続人らの納付すべき相続税額(別表三の符号12の「合計額」欄の金額)

二億七四六二万九一〇〇円

右金額は、相続税法一五条ないし一七条、一九条の二(一五条及び一六条については、いずれも平成四年法律第一六号による改正後のもので平成六年法律第二三号による改正前のもの。一九条の二については、平成六年法律第二三号による改正前のもの。)の各規定により、次のとおり算定したものである。

(1) 本件相続人らの課税価格の合計額(別表三の符号1の「合計額」欄の金額)

一〇億〇六五四万九〇〇〇円

右金額は、前記(一)の金額である。

(2) 遺産に係る基礎控除額(別表三の符号2の「合計額」欄の金額)

八六〇〇万〇〇〇〇円

右金額は、相続税の課税価格の合計額から控除すべき基礎控除額であり、相続税法一五条により、四八〇〇万円と、九五〇万円に本件相続人らの人数である四を乗じて算出した三八〇〇万円との合計額である。

(3) 課税遺産総額(別表三の符号3の「合計額」欄の金額)

九億二〇五四万九〇〇〇円

右金額は、右(1)の金額から右(2)の金額を控除した金額である。

(4) 法定相続分に応ずる取得金額(別表三の符号5の各金額)

<1> 戊(法定相続分二分の一) 四億六〇二七万四〇〇〇円

<2> 原告甲(法定相続分六分の一) 一億五三四二万四〇〇〇円

<3> 原告乙(法定相続分六分の一) 一億五三四二万四〇〇〇円

<4> 原告丙(法定相続分六分の一) 一億五三四二万四〇〇〇円

右各金額は、相続税法一六条により、本件相続人らが右(3)の金額を法定相続分に応じて取得したものとした場合の取得金額であり、右(3)の金額に本件相続人らの法定相続分をそれぞれ乗じて算出した金額(ただし、国税通則法一一八条一項により、本件相続人ら各人ごとに一〇〇〇円未満の端数を切り捨てた後の金額)である。

(5) 相続税の総額の基礎となる税額(別表三の符号6の各金額)

<1> 戊 二億一五六二万八一〇〇円

<2> 甲 四八九九万〇八〇〇円

<3> 乙 四八九九万〇八〇〇円

<4> 丙 四八九九万〇八〇〇円

右金額は、右(4)の<1>ないし<4>の各金額に相続税法一六条に規定する税率を適用して算出した金額(各人ごとに一〇〇円未満の端数を切り捨てた後の金額)である。

(6) 相続税の総額(別表三の符号7の「合計額」欄の金額)

三億六二六〇万〇五〇〇円

(7) 本件相続人らの相続税額(別表三の符号9の各金額)

<1> 戊 八七六七万八九七七円

<2> 甲 一億〇七六七万七四八二円

<3> 乙 八七五九万九五六六円

<4> 丙 七九六四万四四七五円

右各金額は、相続税法一七条により、右(6)の金額に、按分割合(別表三の符号1の各相続人欄の金額を同符号の合計欄の金額で除した割合)を乗じて算出した金額である。

(8) 贈与税額控除額(別表三の符号10の各金額)

<1> 戊 四万〇〇〇〇円

<2> 甲 一二万六一〇〇円

<3> 乙 四万〇〇〇〇円

<4> 丙 一二万六一〇〇円

右各金額は、相続税法一九条による金額であり、本件修正申告額と同額である。

(9) 配偶者の税額軽減額(別表三の符号11の「訴外戊」欄の金額)

八七六三万八九七七円

右金額は、相続税法一九条の二に基づき、丁の配偶者である戊に対して軽減される相続税額である。

(10) 本件相続人らの納付すべき相続税額(別表三の符号12の各金額)

<1> 戊 〇円

<2> 甲 一億〇七五五万一三〇〇円

<3> 乙 八七五五万九五〇〇円

<4> 丙 七九五一万八三〇〇円

右各金額は、右(7)の各金額から、右(8)及び右(9)の各金額を控除した後の金額(国税通則法一一九条一項により、一〇〇円未満の端数を切り捨てた後のもの)である。

(三) 本件各更正処分の適法性について

被告が本訴で主張する原告らの納付すべき相続税額は、前記(二)(10)で述べたとおり、原告甲が一億〇七五五万一三〇〇円、原告乙が八七五五万九五〇〇円、原告丙が七九五一万八三〇〇円となるところ、右各金額は、本件各更正処分における各相続税額と同額であるから、本件各更正処分は適法である。

(四) 本件各賦課決定処分について

原告らは、丁に係る相続税の課税価格及び納付すべき税額を過少に申告していたものであり、過少に申告したことについて国税通則法六五条四項の規定する正当な理由も存しない。したがって、次のとおり算出した金額を過少申告加算税として賦課決定した本件各賦課決定処分はいずれも適法である。

(1) 原告甲に対する過少申告加算税 一五一一万八五〇〇円

右金額は、国税通則法第六五条二項により、本件更正処分によって原告甲が新たに納付すべきこととなった相続税額一億〇〇七九万〇〇〇〇円(原告甲の納付すべき相続税額一億〇七五五万一三〇〇円から、本件修正申告に係る納付すべき相続税額六七五万五三〇〇円を控除し、国税通則法一一八条三項により一万円未満の端数を切り捨てた後の金額)に一〇〇分の一〇の割合を乗じて算出した金額一〇〇七万九〇〇〇円及び右納付すべき税額一億〇〇七九万〇〇〇〇円(国税通則法六五条二項括弧書きによる)に一〇〇分の五の割合を乗じて算出した金額五〇三万九五〇〇円と合計した金額である。

(2) 原告乙に対する過少申告加算税 一二三九万一五〇〇円

右金額は、国税通則法六五条二項により、本件更正処分によって原告乙が新たに納付すべきこととなった相続税額八二六一万〇〇〇〇円(原告乙の納付すべき相続税額八七五五万九五〇〇円から、本件修正申告に係る納付すべき相続税額四九四万三〇〇〇円を控除し、国税通則法一一八条三項により一万円未満の端数を切り捨てた後の金額)に一〇〇分の一〇の割合を乗じて算出した金額八二六万一〇〇〇円及び右納付すべき税額八二六一万〇〇〇〇円(国税通則法六五条二項括弧書きによる)に一〇〇分の五の割合を乗じて算出した金額四一三万〇五〇〇円と合計した金額である。

(3) 原告丙に対する過少申告加算税 一一三〇万五五〇〇円

右金額は、国税通則法六五条二項により、本件更正処分によって原告丙が新たに納付すべきこととなった相続税額七五三七万〇〇〇〇円(原告丙の納付すべき相続税額七九五一万八三〇〇円から、本件修正申告に係る納付すべき相続税額四一四万五一〇〇円を控除し、国税通則法一一八条三項により一万円未満の端数を切り捨てた後の金額)に一〇〇分の一〇の割合を乗じて算出した金額七五三万七〇〇〇円及び右納付すべき税額七五三七万〇〇〇〇円(国税通則法六五条二項括弧書きによる)に一〇〇分の五の割合を乗じて算出した金額三七六万八五〇〇円と合計した金額である。

(原告らの主張)

(一) 前記(被告の主張)(一)について

(1) (被告の主張)(一)(1)<3>の有価証券の価額について否認する。

同(1)<3>の有価証券のうち、本件出資の価額に関する原告らの主張の詳細は、後記2(原告らの主張)のとおりである。

(2) (被告の主張)(一)(1)<1>のうち、本件土地の価額が五億三〇一八万〇〇六一円であるとの主張について

原告らは、平成一〇年七月八日の第二回口頭弁論期日において、それを認めると陳述をした。

しかし、原告らは、平成一二年一月一九日の第九回口頭弁論期日において、右の認める旨の陳述を撤回して(これに対して被告は異議を述べた。)、本件土地の右価額を争い、後記二3(原告らの主張)(一)のとおり主張した。

(3) (被告の主張)(一)のその余を認める。

(二) (被告の主張)(二)(10)のうち戊の納付すべき相続税額が〇円であることは認め、(二)のその余は否認する。

(三) (被告の主張)(三)、(四)は、否認ないし争う。

(四) 本件各更正処分のうち本件修正申告の課税価格、税額を超える部分並びに本件各過少申告加算税賦課決定処分は違法であり、原告らはその取消しを求める。

2  原告らが相続した丁のAに対する出資一万六九六〇口(本件出資)の価額をいくらと評価すべきか(前記1(一)(1)<3>の有価証券のうち本件出資の価額の問題)。

(被告の主張)

被告は、本件出資の価額の評価に当たり、一口当たりの純資産価額の計算上法人税額等相当額を控除しなかったが、その理由は以下のとおりである。

(一) 相続税法二二条は、相続により取得した財産の価額は、特別の定めあるものを除き、「当該財産の取得の時における時価」により評価するものと規定しており、右にいう「時価」とは、相続開始時における当該財産の客観的交換価値、すなわち、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいうと解される。

しかし、客観的交換価値というものが必ずしも一義的に確定されるものではないことから、課税実務上は、相続税法に特別の定めのあるものを除き、相続財産の評価の一般的基準が財産評価基本通達によって定められ、そこに定められた画一的な評価方式によって相続財産を評価することとされている。評価基本通達に定める一般的な基準とは、財産の種類の異なるごとに、それぞれの財産の本質に応じた合理的な算定方法を定めたものである。

評価基本通達の定める評価方法によらないことが正当として是認され得るような特別な事情がある場合を除き、原則として、評価基本通達に基づいて時価を算定することが相当である。

(二) 本件出資は、有限会社に対する出資であり、有限会社に対する出資の価額は、取引相場のない株式の評価に準じて計算した価額によって評価することとされている。

取引相場のない株式の評価方法については、事業規模に応じて、大会社に対しては類似業種比準価額方式、小会社に対しては純資産価額方式、中会社に対しては併用方式によって評価するとされる。

そして、開業後三年未満の会社等の株式は、「特定の評価会社の株式」(評価基本通達一八九)として、特別な方法により評価することとし(評価基本通達一七八ただし書)、その具体的評価方法を評価基本通達一八九―二ないし一八九―五において定めた。これによると、開業後三年未満の会社の株式は、純資産価額方式によって評価すべきものとされている。

純資産価額方式とは、評価会社の課税時期における各資産を評価基本通達に基づいて評価した価額の合計額から課税時期における各負債の金額の合計額を控除し(右控除後の金額を以下「課税時期における相続税評価額による純資産価額」という。)、さらに、そこから評価差額(課税時期における相続税評価額による純資産価額の計算の基とした各資産の帳簿価額の合計額から、課税時期における各負債の金額の合計額を控除した金額を右純資産価額から控除した残額がある場合におけるその残額)に対する法人税額等相当額を控除して評価会社の一株当たりの価額を算定する方法をいう。

Aは、開業後三年未満の会社であったから、その出資口に対する評価は、取引相場のない株式の評価に準じて、純資産価額方式により行なう。

(三) 評価基本通達は、取引相場のない株式の純資産価額方式による算定に当たって、当該評価会社に評価差額がある場合には、同社の株式評価上、右差額の五一パーセントを法人税額等相当額として同社の課税時期における相続税評価額による純資産価額から控除するものとしている。

これは、会社を解散して事業用資産を売却し、解散に伴う清算所得に係る法人税等を支払った後に残る金額(いわゆる会社の解散価値)を想定し、かかる金額をもって、相続により取得した財産価値と評価したものである。

その趣旨は、個人が株式の所有を通じて会社の資産を間接的に所有している場合と個人事業主として直接に事業用資産を所有する場合とでは、その所有形態が異なることから、その処分性等に自ずと差があるため、相続税課税の公平の観点から、相続税又は贈与税の課税においては、評価の均衡を図るために、両者の事業用財産の所有形態を経済的に同一条件の下に置き換えた上で評価して株式等の価額を算定することが合理的であると考えられることによるものである。すなわち、課税財産の評価差額を法人税法九二条(解散の場合の清算所得に対する法人税の課税標準)の金額とみなし、事業用資産の所有形態を法人所有から個人所有に変更した場合に課税されることになる清算所得に対する法人税額等に相当する金額を相続税評価額から控除することによって、右均衡を図ろうとしているのである。

そして、租税平等主義の観点からすると、評価基本通達に定められた評価方式が合理的なものである限り、形式的に全ての納税者に適用されることによって租税負担の実質的な公平を実現することができるのであって、それゆえ、特定の納税者あるいは特定の相続財産についてのみ、評価基本通達に定める方法以外の方法によってその評価を行なうことは、納税者間の実質的負担の公平を欠くことになり、許されない。

右のとおり評価基本通達によらない評価が違法となるのは、租税負担の実質的公平という平等原則に反するからにほかならない。そうすると、評価基本通達の形式的適用によって、かえって租税負担の実質的平等を害する結果を生ずると認められる場合には、評価基本通達の形式的適用をすべきでないことになる。

すなわち、評価基本通達に定める評価方式を画一的に適用するという形式的な平等を貫くことによって、富の再配分機能を通じて経済的平等を実現するという相続税の目的に反し、かえって実質的な租税負担の公平を著しく害することが明らかであるなどの特別の事情がある場合には、評価基本通達を形式的に適用すべきではないのである。

評価基本通達六において、この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる場合には通達によらないことを規定しているのは、右の理を注意的に規定したものである。

(四) A設立までの経緯は、一3記載のとおりであるが、これは、己税理士が経営するCの提案に基づく相続税回避策として計画的に行なわれたものである。

右相続税回避策とは、取引相場のない株式(出資)を評価基本通達が定める純資産価額方式により評価する場合において、評価差額に対する法人税額等相当額を純資産額から控除する(したがって、相続に際しては右法人税額等相当額分だけ相続税の課税対象額が減少することになる。)という計算方式を利用するために、右評価差額を意図的に創出するものである。すなわち、<1>被相続人が多額の借り入れをし、<2>この借入金によってA社を設立し、<3>A社の出資を著しく低い受入価額で現物出資してB社を設立した上、さらに、<4>被相続人が相続人にB社の出資を売却し、<5>B社がA社を吸収合併した後、<6>最終的に、B社の減資により、被相続人が出資した資金を相続人が取得するという一連の計画である(この方法を以下「A社B社方式」という。)。

具体的には以下のとおりである。

<1> 金融機関からの借り入れ

丁が金融機関から一七億円の借り入れを行う。これによって丁に一七億円の消極財産が作られる。

<2> A社の設立

丁及び本件相続人らは、右<1>の借入金を出資してA社を設立する。このとき、資本金額は低額(一七〇〇万円(右出資払込金額の一〇分の一))にしておき、資本準備金組入額を大きくする(一六億八三〇〇万円)という仕訳をする。なお、A社の出資口数は一万七〇〇〇口とする。

<3> B社の設立

丁及び原告らは、A社の出資(合計一六九九〇口)を一六九九万円(A社の資本組入金額)で現物出資して、B社を設立する。なお、B社の出資口数は一万六九九〇口とする。

これにより、B社には純資産価額と帳簿価額との差額(評価差額)が発生することになる。

<4> B社出資の売買

丁が自己に帰属するB社の出資一万六九六〇口を原告らに一口四万九七七四円(総額八億四四一六万七〇四〇円)で売却する。

この売買により、もともと丁がA社に払い込んだ現金一六億九六〇〇円が、B社の出資一万六九六〇円に形を変えて、右払込金額の半額以下の八億四四一六万七〇四〇円の対価で丁から原告に対して譲渡されることになる。

<5> A社及びB社の合併

その後、B社がA社を帳簿価格で合併する。

右合併により、B社の資本金は、合併前(一六九九万円)から一万円増加して一七〇〇万円となり、出資口数は合併前(一万六九九〇口)から一〇口増加して一万七〇〇〇口となる。

すなわち、通常であれば、消滅会社(A社)の出資者に対して、吸収合併に際して新たに発行する存続会社(B社)の出資が割り当てられるところ、右の場合、存続会社(B社)は消滅会社(A社)の出資一万六九九〇口を保有しているため、同出資一万六九九〇口については出資の割り当てを行わず、合併前に存続会社(B社)の資産として計上されていた同出資一万六九九〇口は消滅することになる。

よって、右合併に際しては戊が保有するA社出資一〇口についてのみB社出資が一対一の割合で割り当てられることになり、右合併後のB社の貸借対照表の資産の部(借方)には現金一七億円が、負債資本の分(貸方)には資本金一七〇〇万円及び資本準備金一六億八三〇〇万円が、それぞれ計上されることになる。

<6> B社の出資

B社は、本件相続人らの現金払込(合計七三〇〇万円)により七三〇〇口の増資を行い、全額を資本金に組み入れる。右増資の結果、B社は資本金九〇〇〇万円、出資口数九万口、資本準備金組入額一六億八三〇〇万円となる。

<7> B社の減資

その後、B社は三〇分の一に減資を行い、資本金を九〇〇〇万円から三〇〇万円に、また資本準備金を一六億八三〇〇万円から五六一〇万円にする。

前記<6>の増資により資本金が九〇〇〇万円に増加したため、右減資の際には、有限会社法九条規定の最低資本金三〇〇万円を維持しながら、資本準備金組入額(一六億八三〇〇万円)の大部分(三〇分の二九)である一六億二六九〇万円相当を減資返戻金に充当できることになる。

したがって、仮に右減資直前におけるB社の資産がA社の吸収合併に際して承継したA社設立時の払込現金一七億円及び増資に伴う払込現金七三〇〇万円(合計一七億七三〇〇万円)のみであれば、本件相続人らは右減資に伴い、合計一七億六四三九万円の現金を受領する形で出資の払い戻しを受けることになる。なお、右減資は、法人税法二二条五項規定の資本等取引に該当するため、B社に対し法人税等が課税されることはなく、また右減資返戻金の金額は、B社の資本等の金額のうち本件相続人らの出資に係る部分の金額を超えず、所得税法二五条規定の配当等の額とみなす金額に該当しないため、本件相続人らに対し所得税等が課税されることもない。

本件のA設立に至る一連の行為は、右計画に基づき、BをA社、AをB社として行われたものであることは明らかである。

現実には、右計画のうち、B社であるA設立までが実行され、その後に相続が発生したことによってB社の出資が相続人に移転しているものであるが、Aの設立は、右計画に基づいて、評価基本通達に定める法人税額等相当額控除の規定を利用し、評価差額を意図的に創出し、計画的に相続税の課税対象額を減少させる方策として行われたものであることは明白である。

(五) 取引相場のない株式(出資)を純資産価額方式で算定するに当たり、評価差額に対する法人税額等相当額を控除することとした趣旨は、前記(三)のとおりであるが、これは、通常の場合、時価算定の方法として合理的である。

すなわち、通常の場合、右評価差額は、一般に、評価の対象たる会社の資産が長年にわたる時の経過等により値上がりして、その価額が帳簿価額を上回る結果、いわゆる含み益として生じるものであるところ、仮に、会社を解散してこれらの財産を個人の直接所有に転換する場合においては、その時点で右含み益相当額について右清算所得に係る法人税等が課されることになり、このことは、直接所有に対し、会社を通じた資産の間接所有であることの制約とも考えられるから、このような場合においては、帳簿価額と含み益の合計額をもって純資産とした上で、右制約に伴う評価上の減算要素として評価差額に対する法人税相当額を観念して控除することは、時価の算定、評価として相当の合理性を有するものということができる。

このように、評価差額に対する法人税額等相当額控除は、相続法二二条にいう時価を算定する合理的要素として位置づけられるものであるから、右控除を算定要素とするに当たっては、その評価差額が発生した経緯やこれを帳簿上認識することについての経済的合理性があるかなどを十分踏まえる必要がある。

そこで、本件の評価の対象であるAにおける評価差額を見ると、これは、Aの資産が時の経過による値上がりなどで通常の形態で含み益を生じたものではなく、そもそも、この評価差額は、Aの設立に当たり、Bの出資を現物出資により受け入れる際、これをBの純資産額に比して著しく低い帳簿価額で受け入れたことによって意図的に形成されたものである。

そして、本件でのさくら銀行からの借り入れ、B及びAの設立に係る一連の行為には、何ら経済的合理性は存しない。

すなわち、丁は、Bの設立資金として一七億六〇〇〇万円もの多額の借り入れを行なっているが、これにより膨大な借入金金利の支払いを要することに鑑みると、右借り入れにより設立した会社の企業活動によって少なくとも借入金金利に見合う配当利益を期待することが通常であるところ、かかる配当利益は発生していない。

また、現物出資による新株発行は、会社が特定の財産(現物)を必要とする場合や出資の便宜を考慮して、財産の出資に対してその価額に相当する株式を与えることを認めたものであり、本来、現物出資により法人を設立する場合、当該法人は、現物出資を受けた財産を基本財産として、独立した経済主体として経済活動を行うべきところ、本件においては、Bの出資そのままではAの企業活動の基本財産となり難く、かつ、不動産賃貸業を主たる事業目的とするAにおいては取引相場のない出資であるBの出資を現物出資により受け入れるべき理由も見い出し得ない。

そして、Aの事業内容は、丁から賃借した高崎市東町の土地を駐車場用地として第三者に賃貸するものであるところ、右土地はA設立以前は戊が代表取締役を務め不動産賃貸業を主たる事業目的として現在も存続するD有限会社が丁から賃借して駐車場敷地として賃貸していたものであること、Aは、設立直後の平成二年九月三日から同年一一月三〇日までの事業年度ないし平成七年一一月期の各事業年度において営業損失及び経常損失を計上していること及び平成八年一一月期の事業年度においては営業利益が一万一八八六円、経常利益が一万七五五五円と少額であること等を勘案すると、Aの設立及び運営自体には何ら経済的利益が認められない。

結局、多額の借り入れをしてBを設立し、Bに対する出資を著しく低い価額で現物出資してAを設立した本件の一連の行為には経済的合理性はなく、これら一連の不自然な行為は、Aの評価差額を人為的に作出することが目的だったことは明白である。

しかも、右回避策においては、最終的にはAの減資によって丁が投下した資金を原告らが回収すること、すなわち、Aの評価差額相当額は減資払い戻しにより原告らが取得し、右評価差額は消滅することが当初から予定されていたものである。したがって、本件相続開始時点において、会社解散による清算所得の発生など、およそ考慮する必要はない状況にあったのである。

以上によれば、本件のように、評価差額に対する法人税額等相当額を控除するという評価基本通達の規定を利用してこの規定の適用を受けるためだけに評価差額を創出し、しかも清算所得への課税もされないように計画された行為にまで、この規定を適用することは、法人税額等相当額を控除することとした趣旨に反するのであって、本件では、Aの出資の時価算定上、法人税額相当額を控除する合理性も必要性もないことは明白である。かかる場合に、評価基本通達を形式的に適用して法人税額相当額を控除することは、租税負担の実質的公平という平等原則に反することになる。

本件でAの出資の時価を算定するに当たり、評価基本通達を形式的に適用すべきでないから、以下のように算定すべきである。

(六) 本件では、取引相場のない株式(出資)の時価の評価について、会社の保有資産に着目した純資産価額方式によるのが合理的である。したがって、本件においては、評価基本通達に定める純資産価額方式の適用上、評価差額に対する法人税額等相当額を控除しないで算定することが、時価の評価として合理的なのであり、このことが、相続税法にいう時価の趣旨に合致し、評価基本通達の趣旨にも適合するものというべきである。

したがって、本件出資の時価評価において、評価基本通達の定めを形式的に適用することなく、評価差額に対する法人税額等相当額を控除しないで別表八のとおり一口当たり純資産価額九万二七五六円と計算し、更にこれにより計算した本件出資(一万六九六〇口)の価額一五億七三一四万一七六〇円などの価額を基になされた本件各更正処分は適法である。

(七) 原告らの主張に対する反論

(1) 後記(原告らの主張)(一)(3)、(二)(1)に対して

以下に述べるとおり、純資産価額方式による評価の際に理論上当然に法人税額等相当額の控除が要請されるものではない。

取引相場のない株式の評価方法については前記のとおりであるが、上場会社に匹敵するような大会社の株式については、上場会社の株式の評価との均衡を図る必要があることから、類似業種比準方式を採用するのが合理的であると認められる。これに対し、個人企業とそれほど変わるところがない小会社の株式は、個人企業者の事業用財産の評価との均衡を図ることが合理的であり、しかも、そもそも、株式は、会社資産に対する割合的持分としての性質を有し、会社の所有する総資産価値の割合的支配権を表象したものであって、株主は、株式を保有することによって会社財産を間接的に保有するものであり、当該株式の理論的・客観的な価値は、会社の総資産の価額を発行済株式総数で除したものと考えられることに照らすと、純資産価額方式は、取引相場のない株式の評価の原則的な評価方法といいうるものであって、純資産価額方式を採用することは極めて合理的と認められる。開業後三年未満の会社についても、その経営状況や財務指標が未だ安定的でなく、類似業種比準方式により適正に株価を算定することを期しがたいことから、純資産価額方式によって評価することは合理的であると認められる。

ところで、評価基本通達が純資産価額方式により株式を評価する際に法人税額等相当額を控除することとした趣旨は、前記(三)のとおりであるが、評価基本通達の定めの沿革を見ると、昭和三九年に、評価基本通達が創設された時には、純資産価額方式は、総資産から総負債を控除したものをもって株式を評価するものとされ、法人税額等相当額を控除する定めは設けられていなかった。しかし、その後、中小企業の相続税が過重ではないかということ、また、中小企業対策として、株式を評価する場合に何らかの形で評価額を減額できないのかということがいろいろと議論され、結局、昭和四七年に、評価差額に対する法人税額等相当額の控除が採用されたという経緯がある。

その際、法人税額等相当額を控除することの合理性は、個人が株式の所有を通じて会社の資産を間接的に所有している場合と個人事業主として直接に資産を所有する場合とでの評価の均衡を図る必要があることに求められた。すなわち、例えば、評価会社が被相続人の個人的な資質や能力に依存していたいわゆるワンマン会社であって、相続の開始によって事業の継続が不可能になる場合や相続人が会社の資産を自己のために自由に利用あるいは処分したい場合には、会社を解散、清算することにより被相続人が所有した株式数に見合う財産を手にするほかないところ、その場合に、法人に清算所得(いわゆる含み益)があった場合には、その清算所得に対して法人税等が課されるため、個人事業者が直接に事業用資産を所有している場合に比して、その法人税額等相当額分だけ実質的な取り分が減少する。

それゆえ、このような株式の評価に当たって、個人が株式の所有を通じて会社の資産を間接的に所有している場合と個人事業主として直接に事業用資産を所有する場合とで、両者の事業用財産の所有形態を経済的に同一の条件の下に置き換えた上で評価の均衡を図る配慮は合理性を有する。

純資産価額方式において法人税額等相当額を控除するのは、かかる配慮に基づくものであり、このような評価の均衡を図る必要性と関係なく、純資産価額方式による評価の際に理論上当然にその配慮がなされるべきものとする趣旨ではない。

かえって、評価基本通達が法人税額等相当額を控除することとしていることを利用し、ことさらに評価差額を意図的に作出して相続税の軽減を図り、しかも、当初から会社を解散した場合の清算所得に対する課税が予定されていないような場合においては、評価基本通達を形式的、画一的に適用し、法人税額等相当額を控除することは、本件通達の趣旨に合わないのみならず、このような計画的な行為を行うことのない納税者との間での租税負担の公平を著しく害し、また、富の再分配機能を通じて経済的平等を実現するという法の立法趣旨に反する著しく不相当な結果をもたらす。

(2) 後記(原告らの主張)(一)(3)に対して

前記のとおり、評価基本通達を形式的に適用すべきでない特別の事情があることは明らかである。

(3) 後記(原告らの主張)(三)(1)に対して

本件処分は、本件出資の評価に当たって、本件相続にかかる一連の事実に照らし、評価基本通達を画一的・形式的に適用すべきでないと認められたことから、評価基本通達をそのまま適用せず、相続税法二二条の定める「時価」が何であるかに立ち戻って評価して行なわれたものであり、平成六年通達を遡及適用したとの主張は当たらない。

評価基本通達をそのまま適用して評価することが著しく不適当と認められる場合には通達によらないことは評価基本通達上も本来予定されているところなのであり、本件における取扱いは、平成六年通達が定められる以前においても統一的な課税実務上の取扱いとして既に行われていたものである。それは、平成五年一〇月ころなされた国税庁から各税務署に対する事務連絡(以下「事務連絡」という。)からも明らかである。そして、平成二年通達においても、評価基本通達をそのまま適用して評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価するとして、評価基本通達によらない他の方法によって評価する場合があることを定めているところ(評価基本通達六)、右事務連絡については、右「国税庁長官の指示」と解し得るとの裁判例も存するところである。

平成六年通達一八六―二によれば、現物出資により著しく低い価額で受け入れた取引相場のない株式等がある場合には、同通達一八五における評価差額の計算上、当該株式にかかる評価差額相当額を帳簿価額の合計額に加算して算定することとなるため、結果的に当該株式にかかる評価差額が計算から排除されること、すなわち、これに対する法人税額等相当額が控除されないこととなって、本件処分における評価と同様の算定結果をもたらすことになる。平成六年通達一八六―二は、本件類似の事例の頻発化への対応を図るために、確認的に規定されたものである。

(4) 後記(原告らの主張)(四)に対して

原告らが主張するようなプロジェクトチームを組織し、己税理士及びE協会の会員税理士が関与した節税対策案についてだけ更正・決定するよう各税務署長に指示した事実は存しない。また、被告は、同税理士が関与していることを理由に本件更正処分等を行ったものでもない。

したがって、平等原則違反の主張は失当である。

(5) 後記(原告らの主張)(五)に対して

純資産価額方式は、株式が会社の有する資産に対する持分としての性質を有することに着目して、その評価をしたものであり、株主は、現に存在する会社の資産に対して割合的持分を有するものであるから、課税時期における会社の総資産価額は、評価の時点において会社が存在し、会社が継続することを前提に当該会社の総資産価額を算定したものでなければならない。

それゆえ、会社資産の評価に当たり、会社が消滅することを前提とし、会社が保有している不動産等を実際に売却したことを想定した課税関係や、清算手続を想定して清算所得が発生した場合の課税関係を問題とするのは正当でない。

(原告らの主張)

(一) 被告の主張に対する反論

(1) 被告の主張(一)に対して

本件出資は、有限会社の持分であるが、これは、法律によって譲渡が厳重に制限されており、自由な取引が法律で禁止されているから、被告の定義では時価を観念し得ない。

(2) 被告の主張(二)に対して

被告は、平成二年通達の趣旨を述べるが、本件は、右改正後の評価基本通達を遡及適用したものである。

(3) 被告の主張(三)に対して

株式について相続税法上の時価を評価する技術としての純資産価額方式の本質は、法人が所有する財産を個人所有に移すと仮定するところにある。法人所有財産を個人に移そうとする以上、当該財産を処分することを意味しているから、当該財産の含み益(時価と簿価との差額)が表面に現われるが、この含み益に対しては、法人税と地方税が課税される。したがって、純資産価額方式による評価において、法人税額と地方税額の合計額を控除することは、合理的であり、必然である。

また、法人所有財産を個人所有に移すと仮定する純資産価額方式は、法人税法上の清算所得に対する課税方法に考え方が極めて類似している。このことから、課税財産の評価差額を法人税法九二条の金額とみなすことには現行税法上合理性があり、みなす以上は例外を認めるべきではない。

被告は、特別の事情がある場合には、評価基本通達を形式的に適用すべきではない旨主張するが、相続開始直前に取引価格が存在していない本件において特別な事情はなく、また、被告はいかなる特別の事情があるかを主張していない。

また、被告が「特別の事情」の根拠とする「実質的な租税負担の公平」とは、税対策をした者としなかった者との税額が違うことになることを禁止するという意味で使われていると考えられるが、税務対策をとることは国民の憲法上の権利の行使である。納税者国民がその所有する財産をどのように処分しまた処分しないとしても、それは憲法二九条一項に保障された憲法上の権利である。納税者国民は、法律に定められている以上の納税義務を負うことはない。原告らが相続税対策をとった結果、相続税対策をとらない者と納税額の差が生じても、被告はそれを原因として原告らに課税することは許されない。

(4) 被告の主張(四)に対して

被告は、評価差額を意図的に創出したことを問題とするが、有限会社法は、株式会社に関する商法の規定と同様、資本充実責任の規定を置いており、現物出資に当たり受入会社が不相当に高い価額で受け入れることに対し裁判所による受入価額変更命令を定めて厳しく制限しており、法は、現物出資の簿価を圧縮すべきことを要求している。

また、被告は、A社B社方式を租税回避と非難する。租税回避とは、私的自治の原則ないし契約自由の原則の支配する私法の世界における私法上の選択可能性を利用し、私的経済取引プロパーの見地から合理的理由がないのに、通常用いられない法形式を選択することによって、結果的には意図した経済的目的ないし経済的成果を実現しながら、通常用いられる法形式に対応する課税要件の充足を免れ、もって税負担を減少させあるいは排除することをいうと解される。しかし、本件は、父親から子に対してAの出資金の移転を意図し、事実相続の発生により移転したのであるから、租税回避に当たらない。なお、租税回避であるとしても、租税法律主義の下では、法律上の根拠規定がない以上、課税庁に否認権限を認めることは困難である。

(5) 被告の主張(五)に対して

Aに対する出資は、その財産の存在形態からして、換価処分可能性が低下しており、したがってその経済価値が低下しているのである。経済価値が低下する以上、評価額が低下するのは当然である。また、被告は、原告らが減資を予定したり、相続税回避目的を持っていたと主張するが、評価額とは客観的経済価値を持つものであるから、主観的目的が財産価値を左右することはない。

Bは、特金外信託で有価証券投資の業務を行っており、Aは、JR高崎駅近くに位置する高崎市東町所在の土地で駐車場経営を行っており、いずれも会社の経済的実体がある。

丁が借り入れをした時期は、株価が右肩上りに上昇しているころであり、会社経営による収益を見込んで借り入れを行ったのであるが、その後の急速な株価の下落により配当ができなくなっただけであり、もとより借り入れには経済的合理性がある。

被告は、Bに対する出資そのままではAの企業活動の基本財産となり得ないと主張するが、一般に、有価証券を現物出資する事例が数多いことは顕著な事実であり、Aにとっては、担保力が付くだけでもBの出資を受け入れる意味がある。

Aは、営業損失及び経常損失を計上してはいるが、原告らは同社から給与を受け取っており、これだけでもAの設立及び運営には経済的利益がある。

被告は、減資により評価差額を原告らが無税で取得することが予定されていた旨主張するが、減資の提案はあったとしても、それだけでそのような予定があったとは言えず、現に平成一〇年八月末まで減資は行っていない。また、そのような予定があることは、法人税額等相当額を控除しない理由とはならない。さらに、相続財産の評価時点は、相続開始時点における時価でなければならないから、そのような予定を評価に当たって考慮する余地はない。

(6) 被告の主張(六)について

被告は、評価基本通達を形式的に適用すべきでないと主張しながら、その一八五の後半を適用せず、前半のみを適用するもので、不自然不合理な主張である。

(二) 相続税法二二条違反

(1) 被告は、本件出資の評価に際し、評価基本通達を形式的に適用すべきでなく、法人税額等相当額の控除をすべきでないと主張するのみで、評価基本通達一八五の前半のみを適用することが相続税法二二条に適応していることを主張立証していない。

評価基本通達一八五は、本来の評価対象物が株式であるにもかかわらず、それが取引相場のない小会社の株式であるため、現実の取引がほとんどなく、取引相場というものがないため、時価評価がほとんど不可能であることから、株式そのものの評価に替え、それに替わる評価技術方法として、とりあえず、当該株式発行会社の所有する資産についての評価基本通達による評価額をもって発行された株式の評価額に一応代替させることとした上で、次いで会社資産の評価基本通達評価額をそのまま個人が所有する小会社発行株式の評価額とするのでは間接所有と直接所有の区別を無視した過大評価になることから、これを避けるため、評価技術上の調節として、会社所有資産の評価額から、個人が株式の所有を通じて会社の資産を間接所有する形態を個人が直接所有する形態に変更しようとするときに課税される税額、つまり処分によって表に現れる評価差額に対して、法人税事業税道府県民税市町村民税が課税されることから、それら諸税額が潜在的にマイナスになっているとも考えられることから、それら諸税の合計税率近似値を乗じた額、つまり法人税額等相当額を控除することによって、会社所有資産の評価額を個人所有資産の評価額に転換するための技術的な方法なのである。

したがって、会社所有資産の評価も法人税額等相当額控除も、評価困難という難問を技術的に解決するための評価技術なのであり、この両者は評価困難を克服するためにどうしたらよいかという一つの思想の下に分かち難く結びついているのであって、分離することはできない。

結局、被告は、本件出資持分を評価せず、本件相続開始により取得したものではないAの所有する財産を評価したものに過ぎず、その評価は、相続税法二二条に違反する違法なものである。

(2) これに対し、被告は、前記(被告の主張)(七)(1)のとおり反論するが、株式(出資)が会社財産に対する持分権の性質を有するからといって、全株式(出資)評価額の総額が会社純資産評価額の合計額と一致するというのは論理の飛躍である。両者は全く別個の財産であり、その法的性質も経済的換価処分可能性も著しく異なる。したがって、評価額が異なるのは当然である。

また、株式の価額を評価する必要が生ずる場面は様々であるが、本件出資の評価の目的は、これより得られた価額をもって、納税者たる原告らの相続税の納税義務の有無及びその金額を判定することであって、私人間の対等な関係における評価とは局面を異にする。すなわち、本件出資の評価に当たっては、国とその統治権に服する国民という権力的な関係を規律するものとしての原理が求められているから、評価額が客観的交換価値を上回る可能性はできる限り排除されなければならない。被告の主張は、評価額が客観的経済価値を上回ることに対する配慮に欠ける。

そして、被告としては、本件出資の評価に際し、評価基本通達一八五の後半の適用を排除して法人税額相当額の控除をしないことの適法性を主張立証すれば足りるのではない。被告は、Aが所有する純資産についての評価額が、Aに対する出資持分の評価額と同額であると主張するが、会社に対する出資持分の評価額が、常に必ず会社の所有する資産の評価額より小さいとすれば、本件各処分は違法である。

会社財産の価額は当該会社に対する出資持分全部の価額であるとすれば、会社所有財産を当該出資持分を所有する個人の所有に移転するに当たって、何らのコストも発生しないはずであるが、現行法上、右移転に当たって、考え得る全ての方法、すなわち借入、減資、解散、贈与、売却において、コストがかかることとなる。

よって、現行法上、会社財産の価額に基づいてその出資持分の価額を評価するには、会社財産の価額を必ず減価しなければならないから、会社財産の価額と出資持分の価額とを同額であるとする被告の本件各処分は違法である。

また、被告の主張は、評価会社の会社所有資産の価額がそのまま出資の評価額であるとすべきか、いくらか減価すべきかという質の問題と、その額をいくらとするかという量の問題とを混同している。含み益の存在は、減価すべきか否かという質の問題領域に存在するのでなく、どれほど減価すべきかという量の問題領域に存在する。評価基本通達による五一パーセントの控除を否定するとしても、質の問題としては、常に必ず減価すべきである。課税当局は、相続税法二二条に基づき同条が規定する「時価」を評価するという判断枠組み内に止まるべきであり、自然発生的とか、人工的とか、法の規定しない判断基準を独自に作り出し、それを新たな基準として法の適用を左右することは、法による授権を越えるものであり、行政の恣意による課税をなすものであって、租税法律主義に反し許されない。

(三) 憲法違反(通達の遡及適用)

(1) 国税庁長官は、平成六年六月二七日付けをもって国税局長並びに沖縄国税事務所長に宛てて、「財産評価基本通達の一部改正について」を発したが、それによれば、評価対象である取引相場のない株式の評価に当たり、その株式を発行する会社の資産の中に、現物出資で受け入れた取引相場のない株式があり、その受入価額が帳簿上著しく圧縮されている場合には、その圧縮された差額を加算することによって、改正前の一八六―二の「(1)―(2)」の差額をゼロにしてしまい、そうすることにより評価差額に対する法人税額等相当額を控除しないこととなる。

本件相続が開始したのは、平成四年一〇月二〇日で、当時通用していた通達は、平成二年通達であった。これは、平成六年六月二七日に改正され、平成六年八月一日以後に相続により取得した財産の評価に適用されることとされ、一般に公表された。また、本件各処分は、平成七年一月三一日になされた。

したがって、本件各処分は、平成六年八月一日より前に発生した本件相続に対し、平成六年通達が発せられた後にこれを遡及適用してなされたものであり、憲法三〇条から導かれる租税平等主義に違反する。

(2) 被告は、前記(被告の主張)(七)(3)のとおりの主張をするが、平成六年通達が定められる以前に、平成六年通達と同一内容の課税実務上の取り扱いが行われていたという事実は存在しない。

また、被告の主張は、公表された通達とは内容の違う、納税者に不利な課税が許されるとするものであるが、これは憲法違反を主張するものであり、租税法律主義に反する。

評価基本通達六は、具体的内容を特定するものではないから、納税者に有利に働く場合には問題はないにしても、納税者に不利益に働くことを許せば、国税庁長官に課税裁量権を与えることになるから、評価基本通達六による課税は租税法律主義に違反する。実質上も、納税者が評価基本通達六による不利益変更の闇討ちにあえば、納税者は予測可能性、法的安定性を奪われることとなり、著しい不安定・不利益を強いられる。

さらに、「事務連絡」なるものは、法的性質が明らかではなく、通常の行政庁内部の事務を連絡するものに過ぎないと考えられ、納税者国民に向かって外部的に公表されたものでもないのであるから、納税者国民に対する課税権行使の法的根拠たりうるものとは認められない。また、本件相続の開始は平成四年一〇月二〇日であり、平成五年一〇月の「事務連絡」を遡及して適用できる根拠はない。

なお、「事務連絡」においては、規制しようとする事例が二例示されているが、そのいずれも以下の点で己税理士が原告に勧めたA社B社方式とは根本的に異なるものである。第一に、「事務連絡」の事例は、上場株式を新設した同族会社に移転するか、上場株式の売却代金を、第一会社の出資を第二会社に対する現物出資を介することによって、同族会社に移転するものであって、上場株式自体ないしはその売却代金を維持することに狙いがある。これに反し、己税理士が考案したA社B社方式は、従前から上場株式を持っていた人のために開発したものではない。第二に、「事務連絡」の事例では、上場株式を維持するか、その売買代金を消極的に維持しようとするだけの狙いである。しかし、己税理士が考案したA社B社方式は、個人の自己資金や借入した資金により会社を設立し、会社が株式投資や不動産投資などの事業を大規模に実行するものであるから、実体のある事業活動を行うものである。第三に、己税理士が考案したA社B社方式とは、単に税金を安くすることを狙ったものではない。投資活動を通じて資産を効率的に運用し、その利益に対しては法人税を支払うという構造である。つまり、「税目の転換」を図る技術なのである。

(四) 平等原則違反

(1) 己税理士は、昭和六一年九月、「E協会」を創立し、中小企業経営者に相続が発生しても不安なく経営が続けられることを目的とする事業に専心してきたが、昭和六三年ころ、A社B社方式と呼ばれる相続税節税案を開発した。A社B社方式は、相続税対策として高い評価を受けて己税理士の手から離れて一人歩きを始め、昭和の終わりから平成の初めにかけて、同方式による節税対策が銀行や証券会社によって全国的に実行され、その件数は一〇〇〇件程度に上ったと推定される。

(2) これに対し、国税当局担当者らは、己税理士を国税当局に刃向かうものとして反感を抱き、己税理士を経済的に破滅させる機会を窺うようになった。

平成の初めころは、各地の税務署長は、A社B社方式に対して更正ないし決定処分をすることには消極的であった。しかし、平成五年から六年にかけて、当時国税庁長官であった濱本英輔は、予想以上にこの節税策を適用しているケースが散見されるため、A社B社案件を更正するかどうかを全国規模で検討することとし、これを検討する会議を三回開催したうえ、A社B社方式を開発し普及させた己税理士の経済的息の根を止める決意を固め、国税庁内に非公式のプロジェクトチームを組織し、己税理士並びにE協会の会員税理士が関与した節税対策案件についてだけ更正・決定するよう各税務署長に指示した。

この指示を受けて、被告は、己税理士を追い込む意図を持って、己税理士が関与していることを理由に、本件を狙い撃ちして本件各処分をかけたものである。

(3) 節税策であるA社B社方式は、全国的に実行されたものであるが、同方式の開発者である己税理士ないしE協会会員が関与していない案件については、更正処分ないしは決定されなかったにもかかわらず、本件各処分は、己税理士及び同協会会員である税理士庚が相続税対策ないし相続税申告書作成に関与した案件であることを理由にしてなされたものである。

右扱いは、合理的理由なく、恣意的に本件各処分を差別して異なる取り扱いをするものであるから、法の下における不平等取り扱いを禁ずる憲法一四条一項に違反するものであり、違法である。

(五) 仮に、本件出資の評価に際し、何らかの事情で評価基本通達を形式的に適用すべきでないとした場合、相続税法二二条に立ち戻って評価すべきであるが、その評価方法、計算過程及び計算結果は以下のとおりである。

(1) 評価方法

非上場株式会社の譲渡制限ある株式については、その買い取り請求価額を巡っていくつかの判例が存在しているところ、判例上一般に承認されている評価方法は、類似業種批准方式、配当還元方式、収益還元方式、純資産価額方式、またはこれら全部または一部の単純平均あるいは加重平均である。

このうち、純資産方式は、会社の有する財産価値をある一定時点で評価し、その価額を発行済み株式総数で除して一株あたりの財産価値を評価額とする方式である。本件評価においては、持分を発行している有限会社の所有する資産の経済価値を根拠に、それに依拠して出資持分の経済価値を演繹的に導こうとするのであるから、この純資産価額方式によるのが最も妥当である。

ところで、この方式のうちでも、会社財産を簿価に基づいて評価する方法と時価に基づいて評価する方法とがあるが、本件出資の時価を算定しようとする以上、時価に基づいて評価する方法の方が妥当である。時価に基づいて評価する時価純資産価額法は、会社財産の時価合計額から負債合計額を控除して正味財産を算出することを基本とする方法である。

ここでは、被告の主張に鑑み、含み益については、評価基本通達一八五、一八六―二による法人税額等相当額を控除しない方式を採用する。しかし、本件出資の時価を評価するに当たって、現に効力がある法規、すなわち法人税法の所得計算に関する原則規定である同法二二条や、清算所得に関する計算規定である同法九三条以下の規定を無視することはできない。当該出資持分を発行している有限会社がある資産を所有しており、その資産の簿価がその資産の時価額よりも低いのであれば、当該会社資産の時価を認識しようとする以上は、その認識の形式が、当該法人の通常の事業年度における処分であれ、また清算事業年度における処分であれ、含み益に対する法人税課税及び地方税課税を回避できると想定することは不可能である。したがって、評価基本通達一八五、一八六―二を適用しないということは、会社資産の含み益を表面に出して評価時点で売却すると仮定する方式によることを意味する。

また、「みなし配当」所得税等については、会社資産を現実に個人に渡すとしていくら手元に残るかを計算するものではなく、あくまで、出資口をいくらと評価すべきかを問題にするものに過ぎないから、控除しない。

さらに、会社資産の時価を算出するに当たり、当該資産を処分すると仮定するのであるから、当該処分に通常要するコストである消費税、売却手数料等についても、無視することは妥当でない。

このようにして、本件出資に対する相続税法二二条による「時価」の評価方法は、仮に原告らが当該出資口を評価時点において現金に転換することができるとすれば、原告ら以外の者はその出資口を取得することとの交換にどれだけの対価を支払うことを応諾するであろうかと想定することから出発することとなる。

なお、評価時点は、本件相続開始時である平成四年一〇月二〇日とする。

(2) 計算過程

<1> まず、Aの払戻額を算出するためには、その子会社であるBの資産をAに払い戻すところから始めなければならない。

このため、まずBは相続開始時点である平成四年一〇月二〇日に解散したものと仮定してAへの払戻可能金額を算定する。

この方法として、Bの直近の決算期である平成三年一一月三〇日の翌日である平成三年一二月一日から、平成四年一〇月二〇日までを解散事業年度として、平成四年一〇月二一日からは清算事業年度とする考え方に立つこととする。清算期間は、地方税の均等割り等の計算上の最小単位期間である、一ヶ月間と仮定する。

まず、Bの平成三年一一月三〇日付け決算書の残高を基準として、それ以降の動きを普通預金通帳、シティトラスト信託銀行作成の特定金外信月次報告書等原始証票で確認して、平成四年一〇月二〇日時点の貸借対照表、損益計算書を作成する。貸付金の未収利息は計上するが、役員退職金の見積もりは行わない。

結果として決算は黒字となるが、前事業年度に発生した欠損金の繰り越し控除を行うから、所得金額はゼロとなり、地方税の均等割額のみの納税となる。

次いで清算手続に入り、特定金外信託により同社が所有する上場株式等を相続開始時点で売却すると仮定して処分価額を計算する。この過程において、有価証券の処分価額については、平成四年一〇月二一日付け日本経済新聞掲載の一〇月二〇日終値によることとし、同日付けの取引のないものについては直近の日付の終値によることとし、この方法によることができないものについては取得価額によることとする。また、処分額から処分に要する売買委託手数料、消費税、有価証券取引税を売却コストとして控除する。

一か月後の平成四年一一月二〇日付けで清算所得を計算し、同日付け決算書類を作成する。結果として清算所得がマイナスになる。ここで平成三年から平成四年にかけて上場株式が大幅に値下がりした事実が明瞭になる。税額は地方税の均等割のみを負債として計上し、総資産から負債を控除して差し引き財産価額を計算し、Aに対する払戻額を計算する。同額は、一三億六〇七七万一七六二円となる。

<2> 次いで、Aについて、上記と同様の方法により平成三年一二月一日から平成四年一〇月二〇日までを解散事業年度とし、平成四年一〇月二一日から平成四年一一月二〇日までを清算期間として計算する。清算所得の計算に当たっては、Bからの払戻金を計上し、同社持分についての帳簿価額を控除するから、ここで評価差益が譲渡益として表面に現れる。清算所得を計算し、清算所得に対する法人税額等を計算する。法人税と地方税の合計額は七億三百万円余に達する。最後に総資産から負債、法人税額等を控除し、各原告に対する払戻額を計算する。

<3> この計算によって、原告らが相続によって丁から取得した出資口についての払戻合計額は、(戊に対する払戻額を除き)金五億〇六五三万〇三二八円であり、一口あたりの払戻額は、三万八二八九・九六七九二円であることが明らかになる。

<4> 払戻金が個人の手に渡った時に課税される「みなし配当」所得税等は控除しない。

(3) 計算結果

以上のとおり、Aが本件相続開始時点において、仮に、原告らに対し、払戻を行うとすれば、出資口一口あたりの払戻額は三万八二八九・九六七九二円である。したがって、本件出資についての一口あたりの相続税法二二条の「時価」は、最大に見積もっても三万八二八九・九六七九二円である。

したがって、被告がそれ以上の価額である九万二七五六円と評価したのは過大評価であり、違法である。

現物出資の受入価額を帳簿上低く計上すれば、現行税法上、清算所得に対する法人税は上昇するのであるから、AがBの出資持分を現物出資として受け入れるに当たり、その簿価を低く計上したからといって、法人税額等相当額の控除を全面否定する被告の計算方法は、現行税法上、均衡を失し、合理性がない。

(4) (被告の主張)(七)(5)に対する反論

原告は、株式価額の鑑定方法として一般に認められている鑑定手法を一つ一つ、相続税法二二条にいう時価を明らかにする観点から検討し、小規模で、設立から間がなく、それにしては資産を有する会社の発行する出資持分の評価方法としては最も適切な方法として時価純資産法を選び出している。

被告は、Aが消滅するものと仮定するのが不当だと主張するが、ことは鑑定手法の技術的問題に過ぎない。すなわち、鑑定手法の技術として解散をただ仮定するものであって、会社の継続を前提とすることと何ら矛盾しないから、不当視すべき理由はない。

3  原告が相続した群馬県高崎市東町の評価(前記1(一)(1)<1>土地のうち本件土地の価額の問題)について

(被告の主張)

(一) 時機に後れた攻撃防御方法について

本件訴訟においては、原告らが被告の主張する本件土地の価額を認めたことから、その後は本件出資の価額を争点として審理を継続してきたものであり、証拠調べも右争点について実施されてきたものであるところ、原告らの本件土地の評価に関する後記(原告らの主張)(三)は、証拠調べが終了し、弁論の終結を予定していた口頭弁論期日において初めて主張されたものであって、時機に後れた攻撃防御方法であるから却下されるべきである。

(二) 自白の撤回について

原告らは、本件土地の価額が五億三〇一八万〇〇六一円であることを認めていたが、右自白を撤回するものである。

しかしながら、右自白が真実に反するとの点については、その根拠は本件土地に係る鑑定評価書のみであり、このような証拠だけで原告らの自白が真実に反するものとは到底認められず、また、右自白が錯誤に基づいてなされたとは認められないから、原告らは自白を撤回できず、本件土地の評価に関する主張をすることができない。

(三) 本件土地の価格は、評価基本通達に基づいて評価し、五億三〇一八万〇〇六一円となる。

(1) 評価基本通達は、市街地的形態を形成する地域にある宅地については、その宅地の面する路線によって評価する路線価方式を採用している。

(2) 路線価は、宅地の価額が概ね同一と認められる一連の宅地が面している不特定多数の者の通行の用に供されている路線ごとに設定され、路線に接する宅地で次に掲げる全ての事項に該当するものについて、売買事例価額、公示価格、精通者意見価格等を基として国税局長がその路線ごとに評定した一平方メートル当たりの価額とされている。

<1> その路線のほぼ中央部にあること

<2> その一連の宅地に共通している地勢にあること

<3> その路線だけに接していること

<4> その路線に面している宅地の標準的な間口距離及び奥行き距離を有するく形または正方形のものであること

(3) 評価基本通達に定める路線価は、右(2)のとおり評定されているが、各国税局長が財産評価基準として公表している具体的な各路線価は、概ね、次のような手順で設定されている。

<1> 主要な路線に接し、かつ、評価通達一四に定める右(2)の<1>ないし<4>の基準に合致する土地(以下「標準地」という。)を選定する。この選定に当たっては、地価事情が類似する地域ごとに、その地域における位置、形状等が標準的なものが選ばれるが、これに加え、地価公示法六条(標準値の価格等の公示)に基づき、国土庁土地鑑定委員会がその価格を判定した土地や国土利用計画法施行令九条(基準値の標準価格)一項に基づき都道府県知事がその価格を判定した土地についても標準地として選定する。

<2> 右<1>のとおり選定された標準地につき、売買実例価額及び精通者意見価格等に基づいてその価格が算定されることとなるが、通常、これらの価額はある程度の幅を持つものであるため、その価額の中庸値を標準地の価額として算定している。なお、昭和四五年に地価公示が行われてからは、右標準地の価額、つまり、正常な価格は、土地について自由な取引が行われるとした場合におけるその取引において通常成立すると認められる価格(地価公示法二条二項)である地価公示価格の水準で算定するようになった。

<3> 標準地の価額の評価時点は、地価公示価格を基準とする考え方に立って、平成四年分の土地の評価から、地価公示価格の評価時点に合わせて、その年の一月一日時点に変更されている。

<4> 実際に決定される路線価については、土地の価額には相当の値幅があることや、路線価は、相続税及び贈与税の課税に当たって一年間適用されるため、評価時点であるその年の一月一日以後の一年間の地価変動にも耐えうるものであることが必要であること等の評価上の安全を配慮して、公示価格水準の八〇パーセント程度を目途に定められている。

(4) 以上のとおり、路線価は、客観的交換価値を的確に反映するために、売買実例価額及び精通者意見価格等も考慮するなど、標準地ごとの個別事情も勘案された適正な手続の下に決定されており、相続税法二二条所定の時価として合理性を有する。

(四) 原告提出の鑑定評価書(以下「辛鑑定」という。)について

辛鑑定は、<1>路線価価格を基準とする方法と<2>収益還元法とでそれぞれ価額を試算し、<1>による資産額に〇・六を乗じたものと、<2>による資産額に〇・四を乗じたものの和をもって鑑定評価額とする。

(1) しかし、右の<1>と<2>にそれぞれ〇・六と〇・四を乗じる根拠が全く不明であって、この鑑定評価額には合理性は全く認められない。

(2) 辛鑑定は、路線価価格を基準として価格を求めるに当たり、本件土地が土地区画整理事業施行区域にあり、仮換地指定がされていないことを減算要素としているが、前記のとおり、路線価の算定手続上、標準地が土地区画整理事業施行区域に含まれていることから標準地ごとの個別事情も既に勘案されているのであって、さらに土地区画整理事業施行区域であることを減算要素として考慮する必要はない。

また、右鑑定方法は、評価時点以降の地価の下落についても減算要素としているが、本件土地の評価時点である相続開始時点の評価を行うに当たり、同時点以降の地価の下落という将来発生するであろう事情を考慮する合理的理由は見当たらない。

(3) 辛鑑定の収益還元法による評価については、本件土地が土地区画整理事業施行区域内にあることから、使用収益に制限があり、本件土地の評価時点における最有効使用は駐車場であるとして、駐車場収入に基づき求めた収益価格を考慮すべきであるとしている。しかし、不動産鑑定士等が鑑定評価を行うに当たってよりどころとしている不動産鑑定評価基準によれば、収益還元法による評価に当たっては、収益増加の見通しについてもその検討を行わなければならないとされており、本件相続開始の時点で土地の使用収益に制限があることを理由に、将来も本件土地の最有効使用は駐車場であるとして、駐車場収入のみに基づき収益価格を算定することには疑問がある。

本件土地は、将来、仮換地の指定があり使用収益が行えること及びその後換地処分があることが確実に見込まれるのであるから、駐車場として利用することが最有効使用であるとは、本件土地または換地処分後の土地の立地条件から必ずしも言えるものではなく、より最有効使用を検討して収益増加を見込まなければならないと言うべきである。

(4) さらに、右鑑定方法による試算価格算定上、管理費を二パーセント、還元利回りを三・五パーセントとした根拠も不明である。

(原告らの主張)

(一) 被告の時機に遅れた攻撃防御方法である旨の主張は争う。

(二) 被告の自白に関する主張について

(1) 自白は成立しない。

本件相続にかかる相続税額等が争われている本件訴訟において本件土地の相続税法二二条の評価額は、自白の対象となる「事実」とは考えられないから、原告らが被告主張の右評価額を認めたとしても、自白は成立しない。

(2) 仮に右の点について自白が成立する場合は、右自白を撤回した。

右自白は、以下のとおり、錯誤に基づき、真実に反するものであったから、その撤回が許されるべきである。

<1> 原告らから相談を受けた庚税理士は、本件土地についての制限があり、売却が困難であると認識しており、路線価によって評価すると過大評価となると考え、高崎税務署を訪ねて資産税課の職員に見解を聴くと、まず庚税理士の申告を待って判断する態度を維持したものの、そのような場合も従前の土地の路線価によって評価すべきであると指示したため、路線価によって評価するほかないと思い込み、錯誤に陥った。

<2> 原告らの代理人が助言を受けた庚税理士も右<1>のとおり錯誤に陥っていたこと等から、原告らの代理人も本件土地の価額について被告の主張を認めたものであり、原告らの代理人も錯誤に陥っていた。

<3> 本件土地は、本件相続開始当時、区画整理事業施行区域内に存したものであり、かつ、いまだ仮換地指定を受けていなかったものであるから、通常の宅地に比して著しい減価要因があったにもかかわらず、路線価のみに基づいてした評価は、真実に反する。

(三) 本件相続により原告らが相続した財産のうち、本件土地は、これを含む高崎駅東口地域北側一帯について昭和五〇年二月二八日に高崎都市計画事業東口第二土地区画整理事業の都市計画決定(告示)がなされ、昭和六〇年八月一五日付高崎市公告九〇号をもって同事業計画決定がなされていた。本件土地について仮換地指定がなされたのは、平成五年二月一〇日であり、本件相続開始時の平成四年一〇月二〇日の時点においては、本件土地について仮換地の指定もなかった。

仮換地指定がない場合における従前の土地については、法律上建築物を新築することはほとんど不可能である。仮換地指定のない土地については、厳重な使用収益の制限が課されていることに加え、従前の土地を売却しようとしても、どこの土地に権利が移されるかが判明しないため、事実上買い手が現れることを期待し難く、処分価格が著しく低下する。したがって、相続税評価に当たって通常の路線価によって評価するのでは過大評価となる。

評価基本通達には、土地区画整理事業施行区域内にある土地であって仮換地の指定もされていない土地については、評価方法の定めがない。このため、評価基本通達に基づいた評価をなすことはできないのに、これに基づいて路線価により評価した本件各更正処分は違法である。

仮換地指定に基づき従前の土地上にあった建物等を全て指定された換地予定地上に移転し、従前の土地に戻ることがないことが明らかであり、かつ、将来換地処分によって右予定地を取得することについて疑いを差し挟む余地がない場合、右予定地の評価額をもって相続税の課税価格としたことが相当であるとした裁判例を参考にすれば、本件の場合、課税時期現在において、仮換地指定さえ受けていなかったのであるから、従前の土地を基準に評価すべきである。

このような観点から、不動産鑑定士に本件土地の鑑定を依頼したところ、本件土地の評価額は二億〇八四八万〇〇〇〇円とされたから、これを上回る評価をした本件各更正処分は違法である。

第三争点に対する判断

一  争点2について

1(一)  相続財産としての相場のない株式(出資)の評価方法

相続税法二二条は、「特別の定めのあるものを除く外、相続、遺贈または贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による。」と規定し、いわゆる時価主義の原則を定め、時価の内容を法律の解釈に委ねている。しかし、相続税の課税対象となる財産は、土地、家屋などの不動産をはじめとして、動産、知的財産権、有価証券など多種多様であり、これら各種の財産の時価を的確に把握することは必ずしも容易でない。そこで、課税実務では、相続税における財産の評価基本通達を定め、各財産の評価方法に共通する原則や各種の財産の評価単位ごとの評価のやり方を具体的に規定し、課税の統一、公平を図っている。評価基本通達は、このような目的で定められたものである。

この評価基本通達は、取引相場のない株式の評価方法について、評価しようとする株式の発行会社(以下「評価会社」という。)をその事業規模に応じて大会社、中会社、小会社に区分し(評価基本通達一七八)、それぞれの会社に適用すべき原則的評価方式を定めている(評価基本通達一七九)。すなわち、上場会社に匹敵するような大会社においては、上場会社の株価を参考にして取引されるのが通常と考えられ、その株式の交換価値は、上場会社の株式の評価との均衡を図ることが合理的であると認められることから、原則として、類似業種批準方式(評価基本通達一八〇)により評価するものとされている。次に、個人企業とそれほど変わるところがない小会社の株式は、その会社の資産に着目して取引されるのが通常であり、その株式の評価は、個人企業者の事業用財産の評価との均衡を図ることが合理的であると認められることから、純資産価額方式により評価するものとされる。さらに、大会社と小会社との中間にある中会社の株式については、大会社と小会社との要素を併せ持つ会社であると認められることから、大会社と小会社の評価方式の併用方式によって評価するものと定めている。そして、従業員株主に代表される同族株主以外の株主等は、一般に持株割合が僅少で会社の事業経営に対する影響力が少なく、ただ単に配当を期待するにとどまるといった実質を有するほか、株式の価額を原則的評価方式により算定することは多大の労力を要することから、評価手続の簡便性をも考慮し、原則的評価方式に代えて、特例的評価方式である配当還元方式により評価することとしている(評価基本通達一七八ただし書)。以上のような取引相場のない株式の評価についての評価基本通達の定めは、評価会社の事業規模及び特性に応じて評価方式を使い分けるものであり、評価会社の実体に即した評価を行うものとして、合理的であると認められる。

また、評価基本通達は、開業後三年未満の会社の株式の評価は、純資産価額方式によることとしている。この点、純資産価額方式は、そもそも株式が会社資産に対する割合的持分としての性質を有し、会社の所有する総資産価値の割合的支配権を表象したものであり、株主は、株式を保有することによって会社財産を間接的に保有するものであり、当該株式の理論的・客観的な価値は、会社の総財産の価額を発行済株式総数で除したものと考えられることからして、取引相場のない株式の評価の原則的な評価方法と言いうるものであること、これに対して、類似業種比準方式は、標本会社として採用されている上場会社に匹敵する評価会社について、配当、利益及び純資産価額(簿価)という三つの比準要素により、業種別の上場会社の平均株価に比準して評価会社の株価を算定する評価方法であり、このような評価方法により適正に株価を算定するためには、評価会社が、標本会社である上場会社と同様に正常な営業活動を行なっていることが前提条件となるところ、開業後三年未満の評価会社は、その経営状況や財務指標が未だ安定的でなく、類似業種比準方式により適正に株価を算定することを期し難いことから、同方式によって評価することは妥当でないといえることに鑑みれば、開業後三年未満の会社の株式の評価に当たり、純資産価額方式に従って評価することは合理的であると認められる。

そして、取引相場のない有限会社の出資の評価については、右のような取引相場のない株式の評価に準じて計算した価額によって評価するものとされている(評価基本通達一九四)。この点、一般に、合名会社、合資会社及び有限会社に対する出資について取引相場というものが形成されておらず、取引相場のない株式との類似性が高いことからして、右通達の定めは合理性がある。

(二)  法人税等相当額の控除の趣旨

評価基本通達は、純資産価額方式によって小会社の株式を評価する際に、法人税等相当額として評価差額の五一パーセント相当額を控除することとしている(評価基本通達一八五、一八六―二)。これは、例えば、評価会社が被相続人の個人的な資質や能力に依存していたいわゆるワンマン会社であって、相続の開始によって事業の継続が不可能になる場合や相続人が会社の資産を自己のために自由に利用あるいは処分したい場合には、会社を解散、清算することにより被相続人が所有した株式数に見合う財産を手にするほかないところ、その場合に、法人に清算所得(いわゆる含み益)があった場合には、その清算所得に対して法人税等が課されるため、個人事業者が直接に事業用資産を所有している場合に比して法人税等相当額分だけ実質的な取り分が減少することになることから、このような株式の評価に当たって、個人が株式の所有を通じて会社の資産を間接的に所有している場合と個人事業主として直接に事業用資産を所有する場合とで両者の所有形態を経済的に同一の条件の下に置き換えた上で評価の均衡を図る必要があるとの考えから、昭和四七年に設けられたものである。

このような評価基本通達の定めは、あくまで個人が株式の所有を通じて会社の資産を間接的に所有している場合と、個人事業主が直接に事業用資産を所有する場合との評価の均衡を図ろうとする趣旨に出たものであって、そのような評価の均衡を図る必要性と関係なく、純資産価額方式による評価の際に理論上当然にその配慮がされるべきものとする趣旨ではないというべきである。

そして、評価基本通達が法人税等相当額を控除することとしていることを利用して、ことさらに評価差額を人為的に作出して相続税の軽減を図り、しかも、当初から会社を解散した場合の清算所得に対する課税が予定されていないような場合においては、本件通達を形式的、画一的に適用し、法人税等相当額を控除するとすることは、本件通達の趣旨に沿わないのみならず、このような計画的な行為を行うことのない納税者との間での租税負担の公平を著しく害し、また、富の再配分機能を通じて経済的平等を実現するという法の立法趣旨に反する著しく不相当な結果をもたらすから、このような場合は、評価基本通達によらないことが相当と認められる特別の事情があると解するのが相当である。

したがって、そのような場合においては、純資産価額方式によって株式(出資)を評価するに当たって、法人税額等相当額を控除しないで計算したものをもって当該株式(出資)の時価と認めるのが相当である。また、このように解すると、結果的には、評価基本通達一八五の前半のみを適用することとなるが、法人税等相当額の控除の趣旨が前記のとおりであって、理論上当然のものではないことからすれば、何ら不合理ではない。

2  法人税等相当額の控除に関連する本件の事情

(一) そこで、評価基本通達によらないのを相当とする特別の事情の有無を本件についてみるに、前記争いのない事実、証拠(甲七七、一四九、一八七、乙二、四、八、証人庚、同己)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

原告甲は、平成二年ころ、顧問税理士である庚税理士に、丁の所有財産からして相続税が過大になりそうであることから、節税の方法について相談した。当時、丁の財産のほとんどは、土地と株式会社Cの株式で構成されており、評価額の合計は一二億円余であった。

庚税理士は、己税理士が設立した「E協会」に入会していたので、丁のケースについて己税理士に相談したところ、己税理士は、いわゆるA社B社方式を提案した。その具体的な内容は、前記二2(被告の主張)(四)のとおりである。

その後、丁がその所有する土地を担保に一七億六〇〇〇万円を借り入れ、丁及び本件相続人がそのうちの一七億円を出資してBを設立し、さらに、丁及び原告らがBに対する出資を現物出資してAを設立した経緯は、前記一争いのない事実3記載のとおりである。

なお、平成四年一〇月二〇日に丁が死亡したが、その後、Aは、平成六年一二月二七日、株式会社に組織変更し、平成九年三月一七日、Bを合併し、平成一一年九月三〇日、株主総会の決議により解散し、同年一二月一日には清算を結了した。

この間、Aの売上高は、平成三年一一月期から平成八年一一月期まで六〇〇万円から七〇〇万円台であり、全体では、平成三年一一月期から平成七年一一月期まで営業損失を計上し、平成八年一一月期には、一万円余の営業利益を計上した。

(二) 以上によれば、Aの設立に関して、以下の事情を認めることができる。

丁は、一七億六〇〇〇万円もの多額の借入をしてBを設立し、Bの出資を現物出資して、Aを設立しているが、もともと現物出資により法人を設立する場合、当該法人は現物出資を受けた財産を基本財産として独立した経済主体として経済活動を行うことが予定されているところ、不動産賃貸業を主たる事業目的とするAが、取引相場のないBの出資を現物出資により受け入れる必要性も合理性も見出し難い。

したがって、丁が多額の借入をして消極財産を作った上、借入金によって設立したBの出資を著しく低い価額で現物出資してAを設立したのは、これによりAの評価差額を作出し、評価基本通達の法人税等相当額控除の規定を利用することによって、相続財産の評価を大きく下げることを目的としたものというべきである。

また、Aの設立は、前記二2(被告の主張)(四)のとおりのBの設立から始まり、AがBを合併し、増資の上減資して、当初の出資金を払い戻す一連の過程の中に位置づけられるものであり、当初からAの清算所得に対する課税は予定されていなかったものである。確かに、Aは、設立後二年以上にわたって合併を行わないままに本件相続を迎え、実際には、その後に株式会社に組織変更した後、Bを合併して清算手続をしているが、前記認定のとおり、そもそもB及びAの二社の設立は、己税理士の提案を受けて節税対策として出発し、A設立後は、いつでもその提案に従って合併及び減資により清算所得に対する課税を受けることなしに出資の払戻を受けることができた状態にあったのであって、たまたま現実に何らかの事情でその提案と異なる手続をたどったからといって、当初から清算所得に対する課税を予定していたとすることはできない。

結局、Bの出資を著しく低い価額でAに出資することにより、丁の所有する財産の価値にはほとんど変動がないにもかかわらず、原告らの相続税額は大幅に軽減されることになり、このような場合に、評価基本通達を形式的、画一的に適用し、法人税等相当額を控除することは、前記のような評価基本通達の趣旨に沿わないのみならず、一般の納税者との間の公平を著しく害し、相当でないといわなければならない。したがって、本件においては、評価基本通達をそのまま適用しないことが相当と認められるような特別の事情があるというべきである。

3  以上のように、本件出資の評価については、評価基本通達によるべきでない特別な事情があり、その場合の「時価」については、純資産価額方式による評価に法人税額等相当額を控除しないで算定するのが相当である。

4  原告らの主張に対する判断

(一) 二2(原告らの主張)(三)について

本件各更正処分は、本件出資の評価においては、評価基本通達一八五、一八六―二をそのまま適用するのが相当でない特段の事情があるとして、相続税法二二条及び評価基本通達六の定めるところに従い、評価基本通達を修正して適用したものである。そして、乙一〇の一ないし四によれば、このような取扱いについては、平成五年一〇月ころ国税庁から事務連絡により各税務署長に対し指示がなされたものであり、むしろ、平成六年評価基本通達は、右事務連絡の取扱いの考え方を評価基本通達の本則として取り入れたものである。

なお、原告らは、本件は、事務連絡の事例とは事案を異にすると主張するが、乙一〇の一によれば、事務連絡においては、自己の所有する上場株式を売却してその資金でA社を設立する他は本件とほぼ同様の事例について、B社の出資に対して法人税額等相当額控除を行わないこととされているところ、もともと所有する財産を基に評価差額を作出して評価を下げようとする場合と、借入に基づく資金で評価差額を作出して自己の所有する財産の評価を全体として下げようとする場合とで何ら取扱いを区別すべき理由はないから、原告らの主張は失当である。

以上のとおり、本件各更正処分は、平成六年通達を遡及適用してなされたものでないことは明らかであり、原告らの主張は失当である。

(二) 二2(原告らの主張)(四)について

(1) 甲一四九、証人己によれば、以下の事実が認められる。

己税理士が、直接、またはE協会会員の税理士に対する助言を通して間接に関与したA社B社方式の事例は、一二、三件であるところ、相続開始の日が平成二年中のものである二件を除いては、税務署から全て更正決定を受けている。

一方、平成六年通達が適用されない平成六年七月三〇日にA社B社方式による株式の売買が行われたもので、税務署から更正決定を受けなかった事例が一件である。その事例では、元国税局職員である税理士が関与している。

また、原告らは、平成五年ころ、国税庁長官が、A社B社方式を開発し普及させた税理士己の経済的息の根を止める決意を固め、国税庁内に非公式のプロジェクトチームを組織し、己税理士並びにE協会の会員税理士が関与した節税対策案件についてだけ更正・決定するよう各税務署長に指示した等と主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。

(2) 乙一〇の一ないし四によれば、平成五年一〇月ころには事務連絡が発せられ、関与する税理士が誰であるかを問わず、A社B社方式に対しては、法人税額等相当額を控除しない取扱いとされたことが認められるのであって、元国税局職員である税理士が関与した一件につき更正決定等がなされなかったという一事をもって、被告が、平等原則に反し、ことさら己税理士の関与した事例のみに更正決定をしたと認めることはできない。

(3) 以上によれば、原告らの主張は失当である。

(三) 二2(原告らの主張)(五)について

原告らの算定方法は、原告らが評価時点において出資口を現金に転換するとすればいくらになるかという観点から、解散を仮定して出資の価額を算定するものであり、その過程において清算所得に対する法人税額等を控除しているところ、前記認定のとおり、Aの設立に際しては、そもそも清算やそれに伴う法人税等の負担を予定していなかったものであるから、その前提において失当である。

かえって、前記のとおり、純資産価額方式は、そもそも株式が会社資産に対する割合的持分としての性質を有し、会社の所有する総資産価値の割合的支配権を表象したものであり、株主は、株式を保有することによって会社財産を間接的に保有するものであり、当該株式の理論的・客観的な価値は、会社の総財産の価額を発行済株式総数で除したものと考えられることからして、取引相場のない株式の評価の原則的な評価方法と言いうるものであることなどから、開業後三年未満の有限会社の出資の価格を評価するに当たって、合理性を有しており、かつ、その価格に対して法人税額等控除をしないことにも合理性があるから、原告らの主張を採用することはできない。

5  以上によれば、評価差額に対する法人税額等相当額を控除しないで、別表八のとおり一口当たり純資産価額は九万二七五六円と認められ、更にこれを基に本件出資(一万六九六〇口)の価額は一五億七三一四万一七六〇円と認められる。

二  争点3について

1  訴訟法上の争点について

(一) 本件土地の価額に関する双方の主張の経過は、前記第二の二1(原告らの主張)(一)(2)のとおりであるが、更に詳しくは次の事実が認められる。

被告は、平成一〇年四月一五日の第一回口頭弁論期日において、答弁書を陳述して、本件土地の価額が五億三〇一八万〇〇六一円である旨主張した。

これに対し、原告らは、平成一〇年七月八日の第二回口頭弁論期日において、同月二日付準備書面を陳述して、本件土地の右価額を認める旨の陳述をした。

それ以降、本件訴訟は、本件出資の評価を主たる争点として進行していたところ、原告らは、原告らと被告双方の最終的な弁論を行う予定であった平成一二年一月一九日の第九回口頭弁論期日において、右の認める旨の陳述を撤回し(これに対して被告は異議を述べた。)、同月七日付最終準備書面を陳述して本件土地の右価額を争い、以後は前記第二の二3(原告らの主張)(一)のとおり主張した。

(二) 時機に後れた攻撃防御方法

右(一)の経緯によれば、本件訴訟が本件出資の評価を主たる争点として進行したとは言え、準備手続を行っていない第一審の、第一回口頭弁論期日から二年経過していない時点における被告らの主張は、本件訴訟の事案の性質に照らせば、時機に後れた攻撃防御方法であるとまではいえない。

(三) 自白の成否

本件訴訟は、本件土地を過大に評価したこと等から、本件各更正処分のうち原告ら主張の各課税価格、税額を超える部分に違法があり、このような違法な更正処分を前提としてなされた本件各賦課決定処分も違法であるとして、本件各更正処分のうち右部分及び本件各賦課決定処分の取消しを求めた事案であり、原告らは、第二回口頭弁論期日において、本件各更正処分における課税価格、税額の算定の基の一つであった本件土地の価額について、それが五億三〇一八万〇〇六一円であることを認める旨の陳述をしたのであるが、右の本件土地の価額が五億三〇一八万〇〇六一円であることは、事実の陳述とはいえないから、本件においては原告らの自白は成立しない。

2  実体的な争点について

(一) 相続税法二二条は、相続財産の価額は、特別に定める場合を除き、当該財産の取得の時における時価によるべき旨を規定しており、右の時価とは相続開始時における当該財産の客観的な交換価格をいうものと解するのが相当である。

しかし、客観的な交換価格というものが必ずしも一義的に確定されるものではないことから、課税実務上は、相続財産評価の一般的基準が評価基本通達によって定められ、そこに定められた画一的な評価方法によって相続財産を評価することとされている。これは、相続財産の客観的な交換価格を個別に評価する方法を採ると、その評価方式、基礎資料の選択の仕方等により異なった評価価額が生じることを避け難く、また、課税庁の事務負担が重くなり、課税事務の迅速な処理が困難となるおそれがあること等からして、あらかじめ定められた評価方式によりこれを画一的に評価する方が、納税者間の公平、納税者の便宜、徴税費用の節減という見地から見て合理的であるという理由に基づくものと解される。

そうすると、特に租税平等主義という観点からして、評価基本通達に定められた評価方式が合理的なものである限り、これが形式的に全ての納税者に適用されることによって租税負担の実質的な公平をも実現することができるものと解されるから、特定の納税者あるいは特定の相続財産についてのみ評価基本通達に定める方式以外の方法によってその評価を行うことは、例えその方法による評価額がそれ自体としては相続税法二二条の定める時価として許容できる範囲内のものであったとしても、納税者間の実質的負担の公平を欠くことになり、許されないものというべきである。

しかし、他方、評価基本通達に定められた評価方式によるべきであるとする趣旨が右のようなものであることからすれば、右の評価方式を画一的に適用するという形式的な平等を貫くことによって、かえって実質的な租税負担の公平を著しく害することが明らかな場合には、別の評価方式によることが許されるものと解すべきである。

(二) これを本件についてみるに、原告の主張は、要するに、土地区画整理事業区域内にありながら仮換地指定のない土地については、法律上の建築、使用収益の制限や困難性があるため、評価基本通達に定める通常の路線価により評価すると過大評価になるというものである。

しかし、甲一八八、乙一二、一三によれば、評価基本通達は、市街地的形態を形成する地域にある宅地については、路線価方式を採用していること、その路線価は、路線ごとに設定され、主要な路線に接し、かつ、評価基本通達一四に定める基準に合致する土地で、地価事情が類似する地域ごとに、その地域における位置、形状等が標準的なものを標準地として選定し、売買実例価額、公示価格、精通者意見価格等を基として国税局長がその路線ごとに評定した一平方メートル当たりの価額であること、標準地の評価時点はその年の一月一日とされ、具体的には、前記三つの価格の中庸値の八〇パーセント程度を目途に定められていることが認められるから、路線価の基礎となる標準地の個別事情として、それが土地区画整理事業施行区域に含まれていることは既に勘案されていると考えられる。

(三) したがって、原告の主張する諸事情は、評価基本通達の評価方式を画一的に適用するという形式的な平等を貫くことによって、かえって実質的な租税負担の公平を著しく害することが明らかな場合に該当するということはできず、本件土地の評価に当たり評価基本通達の適用を排除するものではない。

三  争点1について

1  以上の一、二のとおり、本件出資の価額について純資産価額方式によりつつ法人税額等相当額を控除しない計算方法及び本件土地の価額について路線価により算定する方法は、いずれも適法である。

甲一八二、一八三並びに弁論の全趣旨によれば、本件出資を除く各有価証券の価額は別表七にそれぞれ記載のとおりであることが認められる。

その他の取得財産の価額は、当事者間に争いがない。

従って、原告らの課税価格は、別表二の符号12の各金額となる。

2  そして、原告ら各自の納付すべき相続税額は、前記二1(被告の主張)(一)ないし(三)のとおりの計算方法により、原告甲について一億〇七五五万一三〇〇円、原告乙について八七五五万九五〇〇円、原告丙について七九五万八三〇〇円となるところ、右各金額は本件各更正処分における相続税額と同額であるから、本件各更正処分は適法である。

3  以上によれば、原告らは、本件相続に係る相続税の申告の際、課税価格及び納付すべき税額を過少に申告していたものであり、過少に申告したことについて国税通則法六五条四項に規定する正当な理由は認められない。

そこで、前記第二の二1(被告の主張)(四)のとおり計算すると、原告甲について一五一一万八五〇〇円、原告乙について一二三九万一五〇〇円、原告丙について一一三〇万五五〇〇円の過少申告加算税を認めることができるから、本件各賦課決定処分はいずれも適法である。

第四結論

よって、原告らの本訴請求はいずれも理由がないから棄却し、訴訟費用について行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六一条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 村田達生 裁判官 中野智明 裁判官 山﨑威)

別表一の一

本件課税処分の経緯

原告甲

<省略>

別表一の二

本件課税処分の経緯

原告乙

<省略>

別表一の三

本件課税処分の経緯

原告丙

<省略>

別表二 課税価格等の計算明細表

<省略>

別表三 税額算出表

<省略>

別表四 土地の価額の明細表

<省略>

<省略>

別表五 現金、預貯金等の明細表

<省略>

別表六 その他の財産の価額の明細表

<省略>

別表七 有価証券の価額の明細表

<省略>

<省略>

別表八

Aの1口当たりの純資産価額の計算明細書

<省略>

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